手術支援ロボット「ダビンチ」が10年ぶりの新製品、データ処理能力は1万倍に医療機器ニュース(1/2 ページ)

手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」を展開するインテュイティブサージカルが、現行モデルで第4世代に当たる「ダビンチXi」から約10年ぶりの新製品となる第5世代の「ダビンチ 5」について説明。2025年7月から国内販売を開始し、同月内に数台の納品を予定している。

» 2025年06月10日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」を展開するインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)は2025年6月9日、東京都内で会見を開き、現行モデルで第4世代に当たる「ダビンチXi」から約10年ぶりの新製品となる第5世代の「ダビンチ 5」について説明した。同年7月から国内販売を開始し、同月内に数台の納品を予定しているという。

「ダビンチ 5」の発表会見では、テキサス大学 MDアンダーソンがんセンター 腫瘍外科の生駒成彦氏が手技のデモを行った。生駒氏はダビンチ 5で既に10例の手術を行っており、新機能により手術時間が大幅に削減できるなどの効果を実感しているという[クリックで再生]
「ダビンチ 5」を構成するシステム 「ダビンチ 5」を構成するシステム。左から、患者への施術を行う手術支援ロボット部のペイシェントカート、システムを構成する機器の制御を担うタワー、医師が手術支援ロボットの操作を行うコンソール[クリックで拡大]
インテュイティブサージカルの滝沢一浩氏 インテュイティブサージカルの滝沢一浩氏

 1995年創業のインテュイティブサージカルが開発したダビンチは、内視鏡を用いた低侵襲の手術を支援するロボットとして知られており、米国を中心にさまざまな手術で利用されている。2025年3月時点で導入国数は71、導入台数は9900以上、累計症例数は約1700万、2024年単年の症例数は前年比40万増の270万などとなっている。

 日本国内でも2009年に薬事承認を受け、2012年には前立腺悪性腫瘍手術で初めて保険適用の対象になった。2025年5月時点で800台以上が導入されており、保険適用の範囲も2024年までに31の術式に広がっている。日本法人であるインテュイティブサージカル合同会社 社長の滝沢一浩氏は「当初は泌尿器科での利用がほとんどだったが、現在は一般消化器での症例が増加しており、2025年には泌尿器科の症例数を超えるだろう」と語る。

「ダビンチ 5」の国内導入数の推移「ダビンチ 5」の保険適用の術式の範囲 「ダビンチ 5」の国内導入数の推移(左)と保険適用の術式の範囲(右)[クリックで拡大] 出所:インテュイティブサージカル

 導入数の増加に合わせて、日本から発信されるダビンチを用いた論文数も増加を続けており、2025年3月までに累計で2850本に到達した。「4疾患領域/7術式における12年間の230編の論文を統合解析し、ダビンチと一般的な腹腔鏡/内視鏡手術、開腹/開胸手術のアウトカムを比較した論文も出ている。多くの項目でダビンチに優位という結果が出ており、臨床的ベネフィットが確立されつつあると感じている」(滝沢氏)。

ダビンチに関する論文の概要ダビンチに関する論文の結果 ダビンチと一般的な腹腔鏡/内視鏡手術、開腹/開胸手術のアウトカムを比較した論文の概要(左)と結果(右)[クリックで拡大] 出所:インテュイティブサージカル

 手術支援ロボットであるダビンチは、その操作を行うためにインテュイティブサージカルが提供するトレーニングを経てサーティフィケーションを取得しなければならない。2024年末時点で国内に9900人以上の医師がサーティフィケーションを取得しているものの、「2022年から取得希望者が急増しており、待ちが出ている状態になっている」(滝沢氏)という。そこで2025年7月に、東京、福岡、愛知に次ぐ4拠点目のトレーニングセンターを、大阪の未来医療国際拠点「中之島クロス」(大阪市北区)に、東京と同規模で開設する方針である。

「中之島クロス」に新たなトレーニングセンターを開設する 「中之島クロス」に新たなトレーニングセンターを開設する[クリックで拡大] 出所:インテュイティブサージカル
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