日立製作所は、デジタル技術とバイオ技術を融合した「デザイン細胞開発プラットフォーム」技術を発表した。従来の研究開発手法では、細胞の設計や評価は年に数十種類程度だったが、10万種類程度まで可能になった。
日立製作所は2025年5月13日、デジタル技術とバイオ技術を融合した「デザイン細胞開発プラットフォーム」技術を開発したと発表した。細胞遺伝子治療薬の開発時間短縮への寄与が期待され、がんへの治療効果の高いCAR-T細胞の効率的な開発を支援する。
同技術は、生成AI(人工知能)を用いた遺伝子配列の自動生成と、大量のデータを取得可能なハイスループット細胞評価システムを連携させて開発。従来の研究開発手法では、細胞の設計や評価は年に数十種類程度だったが、10万種類程度まで可能になった。
同社独自の遺伝子配列生成AIは、自然言語処理技術の応用により、遺伝子配列データから進化的保存性に基づいて統計的なパターンを効率的に抽出し、CAR遺伝子配列のデータベースを生成する。また、遺伝子配列と細胞機能の相関を示す実験データを学習させることで、がん細胞への活性を最大化するCAR遺伝子配列を1億通りの組み合わせから探索できる。
ハイスループット細胞評価システムは、単一細胞レベルでCAR-T細胞を評価可能なプールスクリーニング技術と、細胞への遺伝子導入から細胞の機能解析までをロボット操作で自動化したアレイスクリーニング技術を組み合わせている。1万4000種類のCAR-T細胞の細胞障害活性を1度に評価でき、CAR遺伝子配列に関連付けられた活性データの大規模取得が可能になった。
こうした遺伝子配列生成AIを用いた遺伝子設計(Design)やハイスループットな細胞への遺伝子導入(Build)、プールスクリーニングとアレイスクリーニングを組み合わせた大規模で精密な細胞機能の解析(Test)、遺伝子配列と細胞機能の相関解析(Learn)を遺伝子設計へフィードバックする、独自のDBTLサイクルを構築。このDBTLサイクルを複数回実行して、活性の高いCAR-T細胞を効率的に設計した。動物実験では、従来型を上回る腫瘍縮小効果を確認している。
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